災害が起こり、崩れてからではもう遅いのです。いつ何時発生するか分からない地震及び自然災害。特にブロック塀を所有している方は、所有地のブロック塀が基準を満たしているかは重要な部分です。ご自身の所有物にブロック塀がある場合、所有のブロック塀が倒壊しないよう未然の被害防止は必須です。そのためのチェックポイントもあわせて解説します。
沿道ブロック塀等の耐震診断の義務付けが開始 ~国土交通省~
2018年6月18日に発生した大阪府北部地震では、ブロック塀等の倒壊が原因となり痛ましい被害が発生したのを皆さんもニュースなどで耳にしたのではないでしょうか。耐震性に問題のあるブロック塀での被害は以前からあり、長らく指摘され問題視されてきました。ですがいよいよ2019年1月1日より、都道府県又は市町村が耐震改修促進計画に記載する避難路の沿道にある一定規模以上の既存耐震不適格のブロック塀等は、耐震診断が義務付けられることになりました。
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何が問題だったのか
現在のブロック塀の建て方は、建築基準法 第四節の二 補強コンクリートブロック造< 施行令第六十二条の八>によって定められています。<制定:昭和55年政令第196号 施行:昭和56年6月1日>1978年の宮城県沖地震の被害を考慮し、1981年に大きくブロック塀の基準が改正されたのです。現在の基準は下の通りです。(※一部抜粋)
1. 高さは2.2m以下とすること。
2. 壁の厚さは、15cm(高さ2m以下の塀にあつては、10cm)以上とすること。
3. 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径9mm以上の鉄筋を配置すること。
4.壁内には、径9mm以上の鉄筋を縦横に80cm以下の間隔で配置すること。
5.長さ3.4m以下ごとに、径9mm以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面
から高さ5分の1以上突出したものを設けること。
6.第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあつては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあつてはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、鉄筋をその径の40倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
7.基礎の丈は、35cm以上とし、根入れの深さは30cm以上とすること。
など他にも事細かに決められています。そしてブロックはJIS規格に準じたものかそれと同等のものを使用し、ブロック塀のモルタルの圧縮強度にもしっかり規定があります。ですがすべてがきちんと基準を守られているのかという疑問はぬぐえません。そしてもう一つの問題は、法改正前に建てられたブロック塀です。法改正前のブロックでは、倒壊の危険性が高いのです。
基準以下、法改正前だけじゃない
現在のブロック塀基準となる改正が、昭和56年6月1日から施行されています。その年に建てられたブロック塀だとすると、今年で37年経過しています。ブロック塀の寿命は一般的に30年。
立地条件や状況、そしてメンテナンスを実施していたかによっても、状況は大きく違ってきます。ブロック塀は雨風にさらされているのが、基本状態です。実際に30年間、耐久性が維持できているとは断言できません。
表面の劣化はもちろん、内側の鉄筋の劣化も考えられます。法改正後のブロック塀も注意が必要なのです。災害などでブロック塀が倒壊。その危険性は自分自身にも降りかかってきます。
沿道ブロック塀等の耐震診断の義務付けによって
地震などの対策では、国や自治体が中心となり建物の耐震改修を推進してきました。無施策になっていたブロック塀に新たな動きが始まりました。対象となるのは避難路の沿道にある一定規模以上の既存耐震不適格のブロック塀等は、耐震診断が義務付けられました。その内容を解説します。
義務付けの背景
建築物の耐震改修の促進に関する法律において、都道府県又は市町村は、耐震改修促進計画において、沿道建築物について耐震診断及び耐震改修を促進することが必要な道路等に関する事項を記載することができることとされています※1。
当該道路に接する通行障害建築物※2であって既存耐震不適格建築物であるもの(耐震不明建築物であるものに限る。)については、その所有者に当該建築物の耐震診断及び所管行政庁に対する耐震診断結果の報告が義務付けられています。
今般、ブロック塀等が倒壊した場合に通行障害が生じることを防ぐため、通行障害建築物に、建物に附属する一定の高さ・長さを有するブロック塀等を追加することとします。
要点をまとめると、耐震改修促進計画において法規制により【通行障害建築物】耐震診断結果の報告義務のある【通行障害建築物】に【建物に附属する一定高さ・長さを有するブロック塀等】が追加されました。
ブロック塀等が倒壊した場合に通行障害が生じることを防ぐためとなっていますが、倒壊などによる直接的な被害の予防・防止の観点も含まれているます。実際にブロック塀が崩れてしまった場合、おそらく道の半分はふさがれてしまうのではないでしょうか。そうすると避難にも、緊急事態の対応も遅れが出てしまいます。
義務付けの概要
通行障害建築物に、その前面道路に面する部分の長さが
25m※3を超え、かつ、その前面道路に面する部分のいずれかの高さが、当該部分から当該前面道路の境界線までの水平距離に当該前面道路の幅員の2分の1に相当する距離※4を加えた数値を 2.5 で除して得た数値を超えるブロック塀等であって、建物に附属するものを追加します。
※1:法第5条第3項第2号及び第6条第3項第1号
※2:地震によって倒壊した場合に、その敷地に接する道路の通行を妨げ、多数の者の円滑な避難を困難とするおそれがあるものとして政令で定める建築物
※3:地形、道路の構造その他の状況によりこの長さとすることが不適当である場合、8m以上 25m未満の範囲において、都道府県知事又は市町村長が規則で定めることができる。
※4:地形、道路の構造その他の状況によりこの距離とすることが不適当である場合、2m以上(高さ 2÷2.5=0.8m以上)の範囲において、都道府県知事又は市町村長が規則で定めることができる。
耐震診断の義務付け 対象となるのは
この耐震診断の義務付けは、どのようなブロック塀が対象になっているのでしょうか。ふまえておきたいポイントがあります。分かりやすく解説します。義務付け対象となるブロック塀は以下の通りの基準です。
- 自治体指定の緊急輸送道路など“耐震義務付け道路”に指定されている道路にあるブロック塀
- 現行のブロック塀基準前に作られたブロック塀(1981年以前の塀)
- 高さ(片側4m道路の場合0.8m以上)と長さ(25m超)の基準を超過したブロック塀
※高さ・長さとも、都道府県知事又は市町村長が規則で定めることが可能。
(詳細は上記※3.※4参照)
- 避難路に隣接する商業施設やマンションなどの大規模な建築物には耐震診断を義務付けている
今回一戸建ては除外されていますが、義務ではありませんが自宅の塀を管理・整備することは所有者の責任です。ですがなかなか目が行き届かない部分です。これを機会に、しっかりとブロック塀など家の周辺を確認しましょう。
<避難路沿道の一定規模以上のブロック塀等を耐震診断の義務付け対象に追加>国土交通省
URL:http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000753.html
自分でできる ブロック塀の安全対策
国土交通省が示した塀の安全確保対策の方針で重要視されている部分に、塀の所有者に対する情報発信や注意喚起が含まれています。「安全点検チェックポイント」を公表して周知や徹底も促しています。ですので安全点検チェックポイントを使って、ブロック塀のチェックを実施しましょう。
補強コンクリートブロック造 (鉄筋が入ったブロック造) の塀の場合
1.塀は高すぎないか
・塀の高さは地盤から2.2m以下か。
2.塀の厚さは十分か
・塀の厚さは10cm以上か。 (塀の高さが2m超2.2m以下の場合は15cm以上)
3.控え壁はあるか。 (塀の高さが1.2m超の場合)
・塀の長さ3.4m以下ごとに、塀の高さの1/5以上突出した控え壁があるか。
4.基礎があるか
・コンクリートの基礎があるか。
5.塀は健全か
・塀に傾き、ひび割れはないか。
<専門家に相談しましょう>
6.塀に鉄筋は入っているか
・塀の中に直径9mm以上の鉄筋が、縦横とも 80cm間隔以下で配筋されており、縦筋は壁頂部および基礎の横筋に、横筋は縦筋にそれぞれかぎ掛けされているか。
・基礎の根入れ深さは30cm以上か。 (塀の高さが1.2m超の場合)
こちらはとても分かりやすくチェックができるようになっています。義務ではありませんが、いざという時のためにうまく活用し正しいチェックを行うことが重要です。
URL:http://www.mlit.go.jp/common/001239765.pdf
<建築物の塀(ブロック塀や組積造の塀)の安全点検等について>国土交通省
URL:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/blockshei
ブロック塀が倒壊して被害が出たらどうなる?
考えたくもないことですが、もし今地震が発生して所有するブロック塀が倒壊してしまったら。どうなるのでしょう。もちろんブロック塀という物的な損害はもちろんですが、もし人や他人の私財に被害を出してしまったら。もちろんその責任は所有者に課せられます。
もしかしたら刑事告訴などという可能性もなくはないのです。うちのブロック塀は大丈夫だよね。どの慢心が大きなリスクに変化します。危険なブロック塀の放置は厳禁です。
塀の撤去や改修費用を支援する制度もあります
ブロック塀も早めのメンテナンスや修復などをすることで、改修費用を抑えることもできます。また強度が足りない場合などは、補強工事のみで済む場合もあります。
そして不適合部分を改修するには費用がかかるるので、費用の捻出が負担になる人もいるかもしれません。塀の撤去や改修費用を支援する制度を実施している自治体もあります。そういう制度をうまく利用しながら、自分の所有物が凶器にさせないことが重要です。
<相談窓口の設置>国土交通省
URL:http://www.mlit.go.jp/common/001254039.pdf
ブロック塀等の診断・設計にも相談に乗ります
KANAEL住まいるの事務所は、埼玉県川口市にあります。一級建築士も在籍していますので、耐震に対する相談も可能です。ぜひお困りの際はお気軽にご相談ください。
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住所:埼玉県川口市中青木1-4-8-109 tel:048-256-0501
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